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清水直樹氏 インタビューInterview

株式会社クリエイティブマンプロダクション代表取締役社長 清水直樹

「人を感動させる人生」に就こう。

日本を代表する音楽フェス「サマーソニック」の仕掛け人として知られる清水直樹氏。
彼の目に映る日本のエンタメ業界の現状と、これから業界をめざす人へのエールを語ってもらった。

summer sonic2018

creativeman productions

1990年設立。
都市型ロックフェス「サマーソニック」をはじめ、
国内外アーティストのライブなど、いわゆるコンサートの企画・招へいを行う、
日本を代表するコンサート事業社。

清水氏はその代表としてフェスを統括。
海外の著名アーティストからの信頼も厚い。

清水直樹氏 インタビューInterview

Chapter 1

この仕事の醍醐味は、
オーディエンスが熱狂する姿を、間近で見られること。

気づいたら、自分の中に
音楽だけが残っていた

僕は静岡県の焼津出身です。
兄や姉がいた影響もあって、小学校のころから邦楽だけでなく洋楽も聴いていました。
ただ、当時の洋楽はクイーンやベイ・シティ・ローラーズなど、中高生にも人気の洋楽アーティストが数多く生まれた時代。
小学校でも誰もが自然と洋楽を耳にしていたと思います。
そんな環境もあって、中学生になると音楽とスポーツに明け暮れ、さらに高校生になるともう音楽中心の毎日を送っていました。
勉強に熱心でなかったこともあって、徐々に自分は音楽の道をめざすほかはないと思うようになったんです。大学をめざすのもピンとこなかったし。
ただ、「大学に行くなら良い大学に行かなければ意味がない」なんてことも冷静に考えるわけです。
でもとにかく音楽の道に進みたくて、そんな想いを抱えながら、東京へと出てきました。

東京で知った、
エンタメ業界の多彩なビジネス

静岡にいたころは洋楽アーティストのコンサートなんてなかなか地元では開催されないから、音楽に触れるといったらレコードやラジオを聴くか、音楽雑誌を読むか、くらいしかありませんでした。だから音楽に関わる仕事といえばレコード会社や音楽プロダクションという発想ぐらい。
コンサートを専門に手がける会社があるなんて、思いもしませんでした。そもそもコンサートはアーティストの所属レコード会社とか、所属プロダクションが取り仕切ると思っていたから。

けれども東京に出てきてそういう会社があることを知り、プロモーターという職種があることに気づいたんです。そしていくつかの会社でプロモーターを経験して、1990年に現在の会社、クリエイティブマンプロダクションを仲間とほぼ二人で立ちあげます。

「不安はありませんでしたか?」みたいな質問をよくされますが、何もなかったところから始めたし、別に大きなビジョンがあったわけでもないから。良く言えば、怖いものなし。悪く言えば、何が不安なのかも知らなかったんでしょうね。

だから当時はなんでも自分たちで行いました。海外からアーティストを呼ぶとなったら、交渉からギャラの設定、ブッキング、チラシ制作や配布などを行うのは当たり前で、時には成田空港へ車に乗って迎えに行くこともありました。本来プロモーターは何十人ものプロフェッショナルが集まって役割を分担して行うものなので、ちょっと、いや、かなり変わってますよね。
ただ、当時はそれが当たり前だと思っていたし、結果としてはプロモートに関するあらゆる仕事を体感的に身につけることができたと思います。
そうやって会社も徐々に大きくなっていくのですが、当時の経験は自分にとってもすごく意味があったなと思っています。

コンサートという
重要なアナログコンテンツ

そうやって、結果的に僕は数あるエンタメ業界の仕事の中からプロモーターを選ぶわけですが、必然だったのかなと思ったりもします。
それは、ほかでは得られないやりがいにあふれているから。コンサートって、アーティストとオーディエンスが「つながる」場所なんですよね。
自分たちでその場所を作って、オーディエンスが熱狂し、感動するようすを間近で見ることができる。そういう仕事って、なかなかないじゃないですか。
エンタメ業界もネット配信が主流になったりとデジタル化が進んでいますが、コンサートってアーティストとオーディエンスがわざわざ会場に足を運んで数時間一緒に過ごす、究極のアナログコンテンツですよね。でもデジタル全盛の時代にあっても、このコンテンツだけは生き残っている。
それどころか現在のエンタメ業界では、ライブやフェスといったイベントが主要なコンテンツと言われるまでに成長しました。
実際に海外のプロモーターが日本に支部を作ったりと、今やレコード会社や所属事務所以上のパワーを持ち始めています。
こうした音楽業界の状況が意味するものって、決して小さくないと思っています。

Chapter 2

サマソニが海を越える。
いつかそんな日が来るかもしれない。

フェスは、
誰にとってもチャレンジの場

サマーソニックを最初に開催したのが2000年なので、2019年はちょうど20周年になります。フジロックと並ぶ、日本を代表する音楽フェスにまで成長しました。グラミー賞を受賞するようなアーティストが出演したいと言ってくれたり、ある洋楽アーティストは、夏に行われるフェスではサマーソニック以外出ないとまで言ってくれることも。そういう話を聞くと、やはり非常にうれしいですね。
もちろん20年もやっていれば、アーティストのブッキングひとつ取っても希望どおりにいく年もあれば、なかなかうまくいかない年もあります。また毎年のフェスの中で、僕ら運営サイドはもちろん、アーティストもさまざまなチャレンジを行っています。
たとえば2009年のサマーソニック10周年の時のことです。この年もヘッドライナーはビヨンセが務めましたが、僕が覚えている限りでビヨンセがフェスのヘッドライナーを務めたのは、この時が最初なんです。でもあの時の彼女は、圧倒的なパワーでオーディエンスを魅了した。そうやって結果を出したからこそ、それからのビヨンセはグラストンベリーなどでもヘッドライナーを務めるようになりました。アーティストにとってのサマーソニックは、そうしたチャレンジの場でもあるんです。

そして僕たちもサマーソニックでさまざまなチャレンジをします。
たとえばブッキングも重要なチャレンジのひとつ。数年前にレディオヘッドをブッキングした際、彼らのあとにはぜひ日本のアーティストに歌ってもらいたいと思いました。
だって、レディオヘッドの前で演奏する機会なんて、滅多にないわけじゃないですか。僕らはブッキングによって、そういうチャンスをアーティストに与えることができるわけです。
その時僕らはサカナクションを推薦し、結果としてフェスとしてもいい流れができたし、アーティストにとっても良い場所になったと思います。
そういうアーティスト同士の関係から生まれる新しい相乗効果は、毎年数多くありますね。

サマソニのアジア展開で、
邦楽を輸出

サマーソニックはこれからもチャレンジを続けます。
たとえば、今注目しているのはアジア。アジア各国からサマーソニックに人を呼ぶというよりも、サマーソニック自体をアジアへ輸出できないか、そんなことも考えています。こうした挑戦はマーケットの拡大ととらえられがちですが、僕が想い描いているのはそれだけではなく、日本のエンタメ業界の活性化にもなると思っています。
お隣の韓国を見ても、グローバルに活動するアーティストは数多く存在し、日本や中国、アジア諸国にも多くのファンを抱えています。
来日すれば、すぐにドームやアリーナをソールドアウトにしますよね。一方で日本はと言えば、そうしたアジアで多くのファンを持つアーティストの数は決して多くはありません。
そしてもしアジアをめざす場合でも、まずは欧米のあとに、というアーティストが多い印象を受けます。この事実だけを取ってみても、日本の音楽業界は遅れていると思います。
こうした状況を変えていきたいんです。それも、僕らなりの方法で。

そこで僕たちに何ができるか、どんなチカラがあるのかと考えたら、やはりフェスでつちかったノウハウや、サマーソニックというコンテンツ。
洋楽に日本のアーティストも織り交ぜて、これだけの規模で20年も続けてきたフェスはフジロックとサマーソニックしかないわけで、その名称はアジア諸国にも届いています。
そうであれば、そろそろ僕らが持っているパワーをアジアに持っていく時期なのではないか。そしてそれをひとつのきっかけとして、日本のアーティストをアジア各国にどんどん紹介していくこともできるのではないか。そんなふうに僕たちは、サマーソニックを日本のアーティストがアジアで活躍するためのコンテンツととらえています。
変化の激しいエンタメ業界ですから、それぐらいの挑戦をしないとサマーソニック30周年は迎えられないのではないでしょうか。

Chapter 3

人の真似なんてしなくていい。
ほかにはない個性が集まるから仕事がおもしろくなるんだ。

同じタイプをそろえても、
新しいアイデアは生まれない

サマーソニックに来てくれて音楽が好きになって、エンタメ業界で働きたいと思うようになった、そんな人もいるんじゃないかと思います。それも僕らがフェスをやっていてうれしいことのひとつです。そして「では、どんな人を採用したいですか?」ということもよく質問されます。
実を言えば、理想のスタッフ像はないんです。むしろ、みんな違っていて良いんです。これはどんな業界にも言えることかもしれませんが、同じタイプをそろえても、そこから新しいアイデアはなかなか生まれない。異なるタイプがいるからこそ思いもしないアイデアが生まれる。

エンタメ業界はほかの業界よりもそうした「異なる個性」が必要な業界と言えるかもしれません。ちなみにクリエイティブマンは業界の中でもその傾向が強いらしく、「個性が豊かでサーカスみたいな会社」とよく言われます。マジシャンもいれば猛獣もいるのかもしれません。そんな個性豊かな面々の良さを引き出していくのが、僕たち経営陣の仕事だと思っています。

ほかの仕事では得られない
喜びに満ちている

一方で、エンタメ業界をめざすことについてはネガティブなイメージを持つ人が多いかもしれません。特に親御さんからすれば、もっと固い職業に就いて欲しいと思われることでしょう。確かに安定性や可能性といった物差しではかられると、ほかの業界の方が良く見えることもあります。ただ、エンタメ業界も変わり始めています。徹夜が当たり前とか、現場で怒号が飛び交うといったことは、もう過去の話。私はACPC(一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会)の常務理事も務めていますが、エンタメ業界の働き方改革は進んでおり、そこは安心してもらっていいと思います。

それと同時に音楽には人を助けるチカラがあります。それは、一般的な仕事ではなかなかできないことでもあります。何より、好きなことを仕事にする人生はすばらしいと思います。そして働き方改革の推進と比例するように、女性スタッフの比率も上がっています。サマーソニックでは毎年ESP学園の学生のみなさんがインターンとして多数参加してくださるのですが、女子学生が多くなりましたよね。この業界には豊かな個性が必要とさっき言いましたが、もちろん女性のアイデアもこれまで以上に必要になるはず。とても期待しています。僕はアジアのエンタメ業界と仕事をする機会も多いのですが、驚くほど女性経営者の会社が多いんです。そういう意味では日本でもさらなる改革が必要で、そうしたことにも期待してもらいたいですね。